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#961
やあ
参加者

同じセミナーに参加された別の方から、似たご質問を頂き下記の様にお答えしたので、参考までに転記しました。

質問:
この前、セミナーで精子調整の話を聴きましたが、37度やCO2環境下だと損傷が高くなるそうなのですが、swim upは培養器内ではなくドラフト内の環境で行ったほうが良いのでしょうか?
プレゼン資料には、
①調整後の精子を長時間インキュベートするとDNAフラグメンテーションが増加する。
②37℃ではさらに増加する。
③CO2環境下では、さらに増加する恐れがある。
④密度勾配遠心法で調整した精子はスイムアップ法よりも安定している。
という内容が記載されていました。

お答え:
いくつか考えなければいけないことがあると思います。
まずは、左上グラフのDNA損傷率ですが、全て運動精子で調べたのか非運動精子も含んだ集団で調べたのかにより解釈が変わります。
例えば、37℃よりも28℃程度の方が、精子運動率を長時間保てるという報告がされていますので、このグラフが運動精子だけを集めて検討した研究でなければ、非運動死滅精子率が時間と共に上昇して、当然DNA損傷率も上昇することになります。
(左上グラフとは、精子DNA損傷率が約5%だったものが、3時間後には10%程度まで上昇していることを示した折れ線グラフでした。)

次に左下のグラフですが、両者の培養液が何であったかが気になります。どちらも受精用の同じ培養液であったなら、CO2無し環境ではアルカリに傾きます。精子はアルカリ性に傾いているほうが運動性が良好であるという報告もされてますので、その辺りが関係している可能性があると思います。また、そうではなく、CO2無し環境がHepesバッファーを使用していたとしたら、Hepes入りのほうが細胞には良くないという認識でしたので、この報告ではHepes入りのほうが良かったという解釈になってしまいますね。
(左下グラフとは、37℃で5%CO2の環境と37℃で0%CO2の環境で比較したところ、24時間後では、前者の方がDFI(DNA fragment index)が上昇した、というグラフでした。)

最後に、密度勾配法とスイムアップの比較ですが、「安定」ってなに?って感じですので、何をどうやって比較したかを見てみないと何とも言えません。

結果的には、今のところこの資料を見ただけで、ドラフト内でスイムアップをやろうとは思えず、報告の精査と他者の報告を待ったほうが良いと思いました。