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2020年7月20日 12:39 PM #956さい参加者
先日某社のウェブセミナーを見て、より有効な精子調整について、培養室内で検討する機会がありましたので質問させていただきます。
以前に取り扱われたテーマと内容が重複していたら申し訳ありません。
①精子の温度管理について
ウェブセミナーにおいて「精子の調整終了後から媒精を行うまでの間、調整後の精子を室温(27.0℃前後)で保存することで、インキュベーター内(37.0℃前後)で保存した場合に比べ、精子のDNAフラグ化を抑えることができる。」という説明がありました。
当院ではインキュベーター内で保存(調整完了後から媒精までの時間は約30分程度です。)しているのですが、他施設様はどのように管理していらっしゃいますでしょうか。
また温度の違いによるDNAのフラグ化の程度の差を示している論文等、ご存知でしたら教えていただけると幸いです。
②乏精子症例の精子調整方法について
ウェブセミナーにおいて「培養液のみでの精子洗浄は、死んだ精子が除去されないために活性酸素の発生リスクがあり、推奨されない。密度勾配遠心法を用いて精子を調整することで、活性酸素は除去される。」という説明がありました。
当院では基本的には①2層性アイソレート液を用いて密度勾配遠心法を行う。②培養液(インセミネーションメディウム)を用いて精子洗浄を行う。③インキュベーター内でスイムアップを行う。という流れで精子を回収しておりますが、重度の乏精子症患者(高速直進精子 0.1×10⁶/ml以下)の場合、精子の回収率を高めるため、①の作業を省略しています。
重度の乏精子症患者にも密度勾配遠心法は必要だとお考えでしょうか。またその場合、アイソレート液は最低何ml用いれば有効でしょうか。
以上2点につきまして、皆様のお考えをお聞かせいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
2020年7月20日 3:09 PM #958MAI参加者当院ではその某社様のご指摘を前に受けてから、
①媒精時間が15時と、採精からの時間が比較的長いので媒精1時間前にインキュベーターに入れますが、それまでの時間は室温で保存しています
・37度で、いろんな反応がより進むため(フラグ発生などの悪い反応も含め)
・媒精時に一番運動活性が起こってほしいため
②乏精子症など、IVF・ICSIにかかわらずすべてパーコール法(80%のみ)を使用してから、洗浄し
行っています。細菌などを除外するために、パーコールをしています
その後SWIM UP処理をするので、より多くの精子を集めるということから
パーコールは3mlにしてあります(前は6mlでした)
さらに3mlにしたことにより、以前は2000rpm20分で遠心をしていましたが
より短時間の2000rpm15分でよくなり、さらに精子へのフラグ化をへらすことが
できると考えています
2020年7月20日 5:13 PM #960やあ参加者② の重度乏精子症の回収ですが、原精液をマクラーで確認したときに、精子が見つかるような症例は、そこそこ沢山いますので、密度勾配遠心法を使うことを、私はお勧めします。
通常のプロトコールで精子が回収できないと判断するくらい少なければ、密度勾配試薬を1mLにし、原精液を重層した後に、密度勾配試薬最下層の100µLほどをいじらないように、スポイト等で原精液と密度勾配試薬を少し混和してから遠心分離し、培養液で希釈洗浄後は、スイムアップを行わずに沈査から精子を回収します。
このような症例はICSI対象でしょうから、これで十分な精子数が得られる場合が多いと思います。
2020年7月20日 5:15 PM #961やあ参加者同じセミナーに参加された別の方から、似たご質問を頂き下記の様にお答えしたので、参考までに転記しました。
質問:
この前、セミナーで精子調整の話を聴きましたが、37度やCO2環境下だと損傷が高くなるそうなのですが、swim upは培養器内ではなくドラフト内の環境で行ったほうが良いのでしょうか?
プレゼン資料には、
①調整後の精子を長時間インキュベートするとDNAフラグメンテーションが増加する。
②37℃ではさらに増加する。
③CO2環境下では、さらに増加する恐れがある。
④密度勾配遠心法で調整した精子はスイムアップ法よりも安定している。
という内容が記載されていました。お答え:
いくつか考えなければいけないことがあると思います。
まずは、左上グラフのDNA損傷率ですが、全て運動精子で調べたのか非運動精子も含んだ集団で調べたのかにより解釈が変わります。
例えば、37℃よりも28℃程度の方が、精子運動率を長時間保てるという報告がされていますので、このグラフが運動精子だけを集めて検討した研究でなければ、非運動死滅精子率が時間と共に上昇して、当然DNA損傷率も上昇することになります。
(左上グラフとは、精子DNA損傷率が約5%だったものが、3時間後には10%程度まで上昇していることを示した折れ線グラフでした。)次に左下のグラフですが、両者の培養液が何であったかが気になります。どちらも受精用の同じ培養液であったなら、CO2無し環境ではアルカリに傾きます。精子はアルカリ性に傾いているほうが運動性が良好であるという報告もされてますので、その辺りが関係している可能性があると思います。また、そうではなく、CO2無し環境がHepesバッファーを使用していたとしたら、Hepes入りのほうが細胞には良くないという認識でしたので、この報告ではHepes入りのほうが良かったという解釈になってしまいますね。
(左下グラフとは、37℃で5%CO2の環境と37℃で0%CO2の環境で比較したところ、24時間後では、前者の方がDFI(DNA fragment index)が上昇した、というグラフでした。)最後に、密度勾配法とスイムアップの比較ですが、「安定」ってなに?って感じですので、何をどうやって比較したかを見てみないと何とも言えません。
結果的には、今のところこの資料を見ただけで、ドラフト内でスイムアップをやろうとは思えず、報告の精査と他者の報告を待ったほうが良いと思いました。
2020年7月21日 9:31 AM #962さい参加者MAI様、やあ様、ご返信ありがとうございます。
大変参考になりました。
<①の温度の件について>
お2人のおっしゃるようにDNAのフラグ化を気にするあまり、精子の運動活性が下がっては、媒精にあまり良い影響がないように感じました。
当院では調整終了から媒精までの時間が30分と短いため、インキュベーター内での保管を続けつつ、他施設様の情報を集めて検討したいと思います。
<②の調整方法について>
やはり密度勾配遠心法は行った方が良いのですね。
MAI様の「遠心時間を減らして精子DNAの損傷を避けつつ、回収率を上げる」方法や、やあ様の「パーコール液の全量を下げて精液と混和し回収率をあげる」方法、大変参考になりました。
どの患者様にどの方法を用いるのか、見極めが大変難しいところですが、経験を積み、また培養室のメンバーで話し合いながら決めていきたいと思います。
お2人ともありがとうございました。
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